本多孝好著 ALONE TOGETHER

タイトルに本の名前を書いておかないと、万が一後日見直す気になったとき分かり辛い気がしたので、これからはきちんと書くようにします。

ALONE TOGETHER (双葉文庫)

ALONE TOGETHER (双葉文庫)

本多孝好著「ALONE TOGETHER」
ほとんどと言っていいほど記憶には残っていないのですが、この作者さんが昔書いた「MISSING」という本を読んだことがあったので、なんとはなしに買ってみました。
ただこの「MISSING」、今思い出してみれば完全にジャケ買いだったのですが…


不登校児などを集めた予備校の講師を勤める主人公の元に、昔退学した大学医学部の教授から連絡が入ります。
脳神経学の権威であるその教授は、延命措置を止めることで自ら死に至らしめた女性の娘を守って欲しいという依頼を主人公に伝えます。
その依頼を受けた主人公は保護対象の女の子を守ることを通じて、長らく向き合っていなかった自分自身と向きあっていくこととなります。


正直、あまり心に響いてくるお話ではありませんでした。
最も気になったのは、主人公の持つ「波長を共鳴させる」という特殊なスキルを、それが非現実的なものであるにも関わらず真正面から受け止めたような表現をほとんどしていない部分でしょうか。
SFチックなお話を説得力の低い語り口でされてしまったら、読者は一体どうやって受け入れればよいんでしょうか…
また、物語の発端を担う大学教授の最後の言葉にも現実味が感じられなかったというのもあります。
確かに齢30にも満たない者が、還暦あたりの人が積み重ねてきた年月の重みを持たせて発した言葉を理解するのには無理があるかと思います。
が、この本の読者層はそういった若い人たちが大半だと思います。
その人たちでも多少なりとも共感が持てるような発言が欲しかったとは思いました。
読んだ瞬間、置いてけぼりを食らった感じがしてしまったので…


ただ、主人公と関わった人達の末路に関しては嫌いではないと思いました。
己を曝け出してしまった人間が今までの場所には戻れないのと同様に、その引き金を引いた主人公も業を背負って生きていくという、悲しいけれども正しい描写があったのには救われた部分があります。