実はもう1冊

読み終えていたので…

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

乙一著「暗いところで待ち合わせ」
私がミステリを読み始めた頃に集英社のジャンプ関係の賞を獲っていたのと、常用漢字に2種類しかない1画で書ける漢字の組み合わせのペンネームが気になっていたのが書店にて手に取るきっかけになりました。


ある住宅街の駅で起きた突き落としによる殺人事件。
その容疑者として警察の手から逃げる男が選んだ隠れ場所、それは駅から程近い視覚障害の女性が1人で暮らす民家でした。
息を殺し潜み続ける男と、その気配に気付きつつも恐怖のため行動を起こせず、気付かぬ振りを決め込んだ女性の交流のない同棲が始まります。


ミステリのつもりで購入したのですが、全く違う類のものでした。
それはそれで楽しく読むことが出来たと思いますが、ミステリのつもりで最後まで突き進むと驚くほどがっかりしてしまう方もいるかもしれません。
謎解きというより主人公格である2人の心理描写に終始しているという感じでしょうか。
お互いに交流のない2人の心理描写であり、ひたすら推測で話が進んでいくためか、文章の上手さを思い切り感じるということはありませんでした。
しかし、女性主人公を視覚障害者とすることで視覚情報を切り捨てたあっさりとした文章が書ける半面、視覚情報を読者に伝えることが出来ないという微妙なバランスの中では綺麗に出来ていると思います。


きっとこの女性が近くにいたら、私は惚れている気がします。